ココアとチョコレートの原料であるカカオ豆。原産地はブラジルのアマゾン川流域、あるいはベネズエラのオリノコ川流域と云われている。一説によると、最初のうちは他の果物と同様にカカオの果実が食べられていたようだ。果肉やパルプの部分を食べ、種のカカオ豆は捨てられていた。だが、ある時、偶然にも火が加わることが起き、カカオ豆が良い香りと味を出すことが発見されたと考えられている。また、コーヒー豆も山火事によって見出されたという伝説がある。ともに偶然の産物である。
そもそも人が飲食するものすべて、そのルーツは地球という大自然が生んだ偶然であることを人は忘れがちだ。そして、それを疎かにして文明に頼りすぎると、いくら良いものを作ったつもりでも、何か物足りないものになってしまうこともある。京都の某酒造メーカーでは、「最新鋭の機器もあくまで人が使う道具」として、人の五感と経験をフルに活かし、昔ながらの道具と同じように最新鋭の機器を細心の注意を払いながら使っている。機械任せでは、分析データ上は最高品質の酒でも、いざ官能試験をすると、どこか納得がいかない場合もあるという。これこそ、「仏を彫って魂入れず」ということだろう。
タバコも嗜好品のひとつだ。ただ、最近は臭いや受動喫煙問題から愛煙家の肩身は狭い。いくら個人の好み、こだわりを充足するためのものといっても、他人が嫌がること、ましてや健康を害するようであれば、遠慮することも大切だ。
小弟も数年前まで愛煙家の1人だった。紙巻タバコはもちろん、葉巻やパイプも楽しんでいた。葉巻やパイプは匂いが強いので通常の紙巻きタバコ以上に気を遣うが、嗜好品同士だからか、コーヒーやウイスキーなどとの相性は抜群だ。また、レギュラーコーヒーやリーフティーと同様に、産地やタイプによる風味の違いを楽しむこともできる。また、火を着ける作業も、コーヒー、紅茶の作法のように楽しいものだ。電子タバコ時代の到来を機にスッパリと足を洗ったが、今でも葉巻やパイプの香りは大好きだ。